新撰組の敬礼

  • 2020.06.28 Sunday
  • 18:56

 新選組にはあまり関心はないのですが、時代劇チャンネルで栗塚旭さん主演の『新選組血風録』をやっていると、つい見入ってしまいます。殺陣は華麗でも派手でもないのに、どうしてあんなにも迫真のシーンが紡ぎだされてくるのだろうかと、毎回感心してしまいます。殺人集団(というと、語弊もありますが、子ども時代に初めて新選組と出会った、古谷一行さん主演の『新選組始末記』で高橋長英さんの山南敬助が切腹させられる場面をみて、トラウマとなって以来、どうしてもそういうイメージを拭えません)の物語であるはずなのに、あの抒情的な画面と台詞に触れていると、まるで一篇の詩に入り込んでいるような心持ちになります。

 

 さて、このドラマにはところどころで新選組隊士による挙手の敬礼シーンが出てきます。

 幕末には、幕府陸軍はフランス式調練を受けていたといいますから、おかしくはないのかもしれませんが、ところかまわず斬りかかる印象の強い彼らが髷姿で挙手の敬礼をする姿はどうもしっくりきません。実際のところはどうだったのでしょうか。

 

 話は変わりますが、岡田准一さん主演の映画『燃えよ剣』がコロナ禍のため、公開延期になっているとか。同じ原田眞人監督の『関ヶ原』で話題になったらしい、やたらと早口で長広舌をふるう、独特な台詞まわしも幕末ものならば、存外にあっているかもしれませんね。公式サイトをちらっと見てみたのですが、鈴木亮平さんの近藤勇も「らしく」て、気になります。早く公開されるといいですね。

 

 先週は懐かしい『国盗り物語』の名場面集?も見られたし、来週には麒麟が帰ってくると思っていてもいいのかしらん?

 

麒麟のひとやすみ:平均視聴率39.7%の大河ドラマ

  • 2020.06.14 Sunday
  • 18:48

 残念なことに今年の大河『麒麟がくる』は、コロナ禍で撮影の中断を余儀なくされていたため、先週の放送分で話のストックを使い切り、きょうから当分はひとやすみとなるそうです。そのかわり、過去の大河の名場面集をやるそうで、今週は歴代の大河史上最高の平均視聴率39.7%(ウィキペディアより)を誇った1987年の『独眼竜政宗』の名シーンが見られるそうです。

 そう、「梵天丸もかくありたい」のセリフが月曜午前中のオフィスでも話題となり、一世を風靡したあの作品です。この年は、私が大学を卒業し、就職した年でもあり、JRが生まれ、お隣の韓国ではいまだ軍事独裁政権下にあり、盧泰愚次期大統領候補が民主化宣言を行った年でもありました。

 

 いまや世界的な名優の渡辺謙さんを世に送り出した大河として、記憶にとどめている方も多いことでしょう。それまで、一部の演劇ファンにしか知られていなかった二十七歳の青年を大半の日本人が知ることになった番組でもあったのです。

 一人の人物の半生を描くことの多い大河ドラマでは、二十代の俳優が老人を演じることも珍しくありませんが、エネルギッシュで悩み多き青年武将を演じる一方で、一癖も二癖もある老政治家・政宗をなんの違和感もなく演じた渡辺謙さんの凄味には舌を巻くほかありませんでした。その迫力ある名演技を今晩また見られるとは本当に楽しみでなりません。

 

アンチヒーローの時代:婆娑羅大名の肖像画

  • 2020.06.02 Tuesday
  • 21:00

 1991年の大河『太平記』がなぜそんなに魅力的で評価が高かったのかをずっと考えています。

 昔から『平家物語』と並ぶメジャーな物語ではあるものの、現代人にとってはイデオロギー的に扱いづらい作品だし、とりわけ戦前には大逆臣・大悪党たる足利尊氏が主人公におさまるなど到底考えられなかったことでしょう。「戦国もの」や「幕末もの」といった人気のカテゴリーではなく、なんでこんなにマイナーで地味な(お説教じみた話の多い)「南北朝もの」が人気を博したのか。

 

 我が国の忠臣を代表する楠公とその党の正体を「悪党」あるいは「散所」民とみなしたり、尊氏と正成との友情を伺わせてみたり、およそ正統派というにはほど遠い『太平記』ではありましたが、まさにそのこと=アンチヒーローの時代を描いたことにこそ、人気の秘密があったように思います。

 (原作の)物語後半こそ、(作者の吉川英治が晩年に病床で執筆していたためか)急ぎ足な展開になってしまい、いささか物足りない内容になってしまっているのは残念ながらも仕方のないことで、かつては悪漢(=不忠者)どもの大親分みたいに考えられていた足利尊氏を新しい時代を切り拓いていくために葛藤しつつも成長していく、悩み多き青年主人公として据えたことも新鮮でしたが、それを見事に演じきった真田広之さんの演技も素晴らしいものでした(当時の真田さんは、JACのアクションスターを象徴するアイドル的な存在で、こういっては申し訳ありませんが、役者としては一過性で消えてしまいそうな印象を抱いていました。それが『太平記』での演技を見て、一変したのをよく覚えています)

 

 若かりし頃の陣内孝則さんが、ロックンローラーさながらに婆娑羅大名・佐々木道誉を演じていたのも印象的でしたし、建武の新政の立役者である異形の帝王・後醍醐を演じた片岡孝夫(現・十五代目片岡仁左衛門)さんの、型破りでありながらも、美しく、神々しさを感じさせる演技は鳥肌ものでした。

 金八先生から抜擢され、戦前の肩ひじ張った大忠臣像を打ち砕き、庶民的で柔軟な「悪党」楠木正成を演じた武田鉄矢さんや、正成の弟・正季を演じた「浪速のロッキー」こと赤井英和さん、「現(うつつ)なきひと」執権北条高時を演じた片岡鶴太郎さん、国民的美少女といわれた後藤久美子さん(元F1レーサーのジャン・アレジ夫人)が悲劇の青年武将・北畠顕家を演じるなど、斬新な演出・配役も話題になりました。

 話題といえば、波乱の役者人生を送った故萩原健一さんが新田義貞役を病気で途中降板したことも話題になりました。代役は、根津甚八さんが務めました。前年に小学生で第4回全日本国民的美少女コンテストのグランプリを受賞し、わずか12歳で高時の愛人役を演じた小田茜さんも話題になりましたね。

 

 とにかく、この作品の出演者には個性的なひとが多く、役柄もまた歴史上名高い悪人たちが多数主演をつとめていて、ひときわ異彩を放っています。そんなところが『太平記』に対する評価と人気の高さの所以といえるかもしれません。江戸時代、実名を出すわけにもいかないため、悪役の代名詞として広く用いられた高師直など、その典型といえるでしょう。師直を演じた柄本明さんの鬼気迫る演技は一見の価値があります。

 一見するといえば、原作者の吉川英治が『随筆私本太平記』の中で、佐々木道誉の肖像画について言及しています。道誉の肖像画はウィキ道誉のページからも見ることができます。息子の高秀が道誉の生前に描かせたものであるらしく、道誉の面影ぐらいは伺えるのではないかと思います。七百年前に「婆娑羅」大名といわれた男の顔をじっくりと眺めてみるのも一興かもしれません。

 

 悪人といえば、『麒麟がくる』にも「戦国の三悪人」のうち、二人までもが主演級で名をつらねています。しかし、どうにも線が細い。優しくて、大人しくて、物分かりのいい人物がとても多くて、まるで今の時代をそのまま見ているかのような、そんな複雑な気持ちにもなってきます。

 面白いドラマは見たいけれど、総体的に穏やかで心やさしいひとびとが登場人物に多いのは、いまの世相を反映しているからだとするならば、それはそれでいいかとも思えてきました。

 

【大河雑感】太平記のこと

  • 2020.05.31 Sunday
  • 10:16

 日曜の朝、六時からBSプレミアムで1991年の大河ドラマ『太平記』の再放送をしています。

 いうまでもなく、『麒麟がくる』と同じ池端俊作さんが脚本を手掛けた作品です。同じ脚本家で、似たような筋書きや設定の話もあって、どうしてこうも違う印象が残るのだろうかと思いながら、見ていました。

 

 真田広之と宮沢りえの悲恋話。二人のあいだを引き裂くかのようにも、支えるかのようにも、関わる大地康夫と柳葉敏郎。大地から報告を受けながら、二人の行く末を見守る緒形拳。そして、真田に嫁ぐ沢口靖子。それに続く、北条一門と足利家の、豪華な婚礼の宴(敬称略)

 

 現代的な口調や恋愛観で描かれるのは、もう当たり前な大河の恋愛エピソードではありますが、最初の十分ほどを見て、両者を比較しようとすること自体に無理があることを悟りました。もう、これ以上、比べるのはよそうと思います。

 

 ※その後、北条得宗家の内管領として絶大な権力を振るうフランキー堺の怪演はさすがというほかなく、彼の暗殺を謀るも事前に察知されて討ち損じると、我を失う片岡鶴太郎の狼狽ぶりも、「現(うつつ)なきひと」執権高時らしくて、なかなかの好演技でした。討幕のために奔走する公家の榎木孝明や、嫁となる沢口の手をとり、息子を託す真田の母役の藤村志保、金沢貞顕役の児玉清や沢口の兄役・勝野洋も味わいあって、見ごたえのある回でした(アップ後、追記。敬称略)

 

 あまりにも色んな条件が違うにせよ、今は今なりに、精いっぱいの作品づくりを望むしかありません。

 ひとまずは、今夜の令和桶狭間を楽しみにしてみようと思います。

 

 

 

【大河雑感】蝮の最期

  • 2020.05.10 Sunday
  • 00:50

 私の、初めて見た大河ドラマが司馬遼太郎原作の『国盗り物語』であったことはに書きました。

 明覚寺の利発な少年・法蓮房が油問屋「奈良屋」の入婿・松波庄九郎となって美濃に乗り込み、西村勘九郎となっては土岐家に仕え、次第に頭角を現して知略の限りを尽くし、やがて長井新九郎を経て斎藤山城守となり、遂には主君をも追って、美濃一国を手中にします。

 この、稀代の大悪人を演じたのは我が国屈指の名優・故平幹二朗さん。北條早雲、松永久秀と並び称されるほどの奸雄でありながら、やけに前向きで明るく、ギラギラした野心的な人物であるはずなのに、どこか清々しさすら覚える主人公(前半パート=道三編)でした。この時代、高度経済成長期ゆえのヒーロー=主人公だったといえるのかもしれません。時の内閣総理大臣は、「コンピュータ付きブルドーザー」「今太閤」とも呼ばれた故田中角栄氏でした。

 

 『岐阜県史』の編纂過程で、長井新左衛門尉・斎藤左近大夫の父子二代による下剋上説が唱えられ、新たな斎藤道三像が言及されるようになったのもちょうどそのころのことだったようです。しかし、時代が求めていたのは、清濁併せのむような、ふところが深く、エネルギッシュなダークヒーローだったのでしょう。

 『麒麟がくる』の道三は、「蝮」と呼ばれるだけあって、謀略も用いるし、猛々しい面もありますが、どこか人の好さを感じさせるといいますか、少し神経質でひ弱な印象があります。市井の油売りから、のしあがってきたオヤジの血肉が削ぎ落されてしまったからでしょうか、

 

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